2010年8月19日木曜日

「複雑系」要約

参照: Wikipedia、複雑系

複雑系(complex system)とは、多数の因子または未知の因子が関係してシステム全体(系全体)の振る舞いが決まるシステムにおいて、それぞれの因子が相互に影響を与えるために(つまり相互作用があるために)、還元主義の手法(多変量解析、回帰曲線等)ではシステムの未来の振る舞いを予測することが困難な系を言う。

これらは狭い範囲かつ短期の予測は経験的要素から不可能ではないが、その予測の裏付けをより基本的な法則に還元して理解する(還元主義)のは困難である。

複雑系は決して珍しいシステムというわけではなく、宇宙全体、天候現象、経済現象、人間社会、政治、ひとつひとつの生命体、あるいは精神的な現象などは、みな複雑系である。つまり世界には複雑系が満ち満ちており、この記事を読んでいる人間自身も複雑系である。ただし研究者にとって具体的な研究成果が出しやすく、書籍などで一般読者などに紹介されやすいものとなると、もう少し小規模の複雑系あるいは限定したものとなりがちで、例えばウイルスの流行状況、大規模交通(フラックス)、バタフライ効果、エントロピー(熱力学第二法則)などが多い。あるいは、パーコレーションやセル・オートマトンなども好んで扱われる。最近では、系の自己組織化の様子をコンピュータにプログラミングして、複雑で法則がないように思える目で見えない発達形成過程を視覚化して把握しようと試みられている。

複雑系はキャッチコピーとして乱用されている場合が非常に多く、また著者によって定義の異なる場合の多い曖昧な術語である。そのため、対象、現象、数学的手法などが上記のようなものに含まれるものを複雑系という言葉で包括的にあつかうということを目的としたある種の雰囲気を伝えるための用語であるともいえる。

目次
1 背景
2 関連書
3 関連項目
4 注

背景
この記事には「独自研究」に基づいた記述が含まれているおそれがあります。これを解消するためにある情報の根拠だけではなく、信頼可能な解釈、評価、分析、総合の根拠となる出典を示してください。

複雑系は還元主義的なアプローチが適用できない系として有名である。そのため現象を単純な法則や原理に落とし込むことで理解したとする、今までの科学がとってきた基本姿勢に対し、複雑系の分野の研究姿勢はその基本的立場に関して若干の違いを持つ。複雑系の分野を貫く基本スタンスとして「複雑な現象を複雑なまま理解しようとする姿勢」を挙げることができる。[1]

複雑な現象を複雑なまま理解しようとする学問、手法は「複雑系の科学」などと呼ばれることが多いが、その源流に眼を向けると、アリストテレスの「全体とは、部分の総和以上のなにかである」といった言い回しにまで遡ることができる。近代になって還元主義が蔓延すると、それに対して警鐘を鳴らすように、全体を見失わない見解を深化させ、個々の分野で具体的な研究として全体性の重要性を説く論文・著書などを発表する学者・研究者らが現れるようになった。現在ではこうした見解・立場の研究は「ホーリズム」または「全体論」などと呼ばれている。こうしたことに関する哲学的で深い議論は現在でも、哲学の一分科である科学哲学の世界などで行われている。現在のいわゆる「複雑系の科学」などと呼ばれているジャンルは、広義のホーリズムのひとつである、と位置づけられていることが多い。

関連書
ミッチェル・ワールドロップ『複雑系―生命現象から政治、経済までを統合する知の革命』新潮社、1996、ISBN 4105331019
田坂 広志『複雑系の知―二十一世紀に求められる七つの知』講談社、1997、ISBN 4062087626
ミッチェル・ワールドロップ『複雑系―科学革命の震源地・サンタフェ研究所の天才たち』新潮文庫、2000、ISBN 4102177213
スチュアート・カウフマン『カウフマン、生命と宇宙を語る―複雑系からみた進化の仕組み』日本経済新聞社、2002、ISBN 4532164257
市川惇信『複雑系の科学―セル・オートマタ体験CD‐ROM付』オーム社、2002、ISBN 4274024865
佐々木正人ほか『アフォーダンス(複雑系の科学と現代思想)』青土社、1997、ISBN 4791791428
河本 英夫、ブランケンブルクほか『精神医学―複雑系の科学と現代思想(複雑系の科学と現代思想)』青土社、1998、ISBN 4791791460

関連項目
力学系
決定論
非線形科学
カオス理論
フラクタル
複雑性
協力現象
自己組織化
熱力学
サイバネティックス
注 [編集]

^ 厳密に言えば、複雑系の科学の手法を駆使している者の中でも、大前提として世界を機械論的で決定論的である、それで全てである、と想定してしまっている者と、それに対して(数はさほど多くはないが)量子力学が突きつけている諸問題なども踏まえて、なんらかの非決定論的な要素も働いている、どうやったところで捕捉出来ない不可解な要素が、人間が捕捉できる系に影響を与え続けている、系全体がシンプルに閉じているという保証も無い、と想定する者の2種類が存在する。ただ、ここまで議論を深めると、問題があまりに大きくなりすぎ、現在のいわゆる「複雑系の科学」の枠組みを超えてしまう。またその要素まで織り込んで具体的なものを研究の成果としては提出することは困難なので、現在のところ、いわゆる「複雑系の科学」というジャンルに携わる者のほとんどは、基本的にその問題には言及を避け、世界を(言外に)決定論的なものと仮定した場合のシミュレーション結果、研究結果などをあっさりと発表している。とりあえず研究可能・実行可能な範囲で具体的な成果を出す、という点では妥当なことが行われている、とも言える。

続く
13:57  2010/08/19

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